あさよるねむる

よくねむるひと

過ぎ去りし日の

 卒業しました。

 過ぎてゆく時間の中で、覚えていることは意外と少ない。大事なことだけピックアップするかのようにピンポイントで記憶に残っている。修学旅行だとか、学園祭だとか。そういう日常とは少しだけ外れたもののことをよく覚えている。

 3年間も高校生として過ごしてきて、友人と語らった日々、センセイの声を子守唄にして眠っていた日々。花束を受け取ったとき、私はこんなに沢山の部活に入っていたのか、と思った。

 文芸部の後輩の文章の中で、はっとするものがあった。「先輩との日々を思い出そうとするが、何故かその顔が思い浮かばない。どういう表情だったのか思い出せない」だとか。私もそうだ。友人と過ごす日々の中で、彼女たちの顔を私はあまり覚えていない。それは忘れてしまったというよりも、最初から顔なんて見ていなくて、その向こう側。心を見ていたのではないかな、なんてことを思った。

 手紙を書いた。他の人はお菓子をくれたけれど、私は手紙にした。没個性の私にとって、唯一の特技といえるものは文章を書くことだけだから、日頃1人で篭もりがちな私の彼女たちに対する思いを手紙にして精一杯伝えた。その思いがきちんと伝わっているかどうかはわからないけれど。

 3年間で何か変わったかな。特撮に出ている若手俳優は1年で顔が随分といい意味で変わるけれど、それ×3の私は、そんなにぎっちりとした密度じゃない。

 これからまた4年。いや、6年かもしれないけれど。そのときの私は、どんな風になっているだろう。そんなことを考える、18歳の3月。